TopicsEssay

お母さんにあげる

2017.08
文:中村幸代


先日、初めてチャリティフリーマーケットに出店しました。前々から、フリマに出店する際には、小さくなった子供の服に加えて、ぜひ売りたいと思っていたモノがありました。それは、何年も前にネット販売で買った、ダイヤモンドもどきのネックレス3個セット。当時、一粒ダイヤのネックレスに憧れていて、けれども本物は買えないから、ダイヤモンドに見えるネックレス3個セット(一粒ダイヤ風、ハート型、ダイヤ3連という3種類のデザインのセット)に飛びついて買ってしまったのでした。届いてみたら、あら残念。いかにも偽物です!という大きさと軽さ。それで一度も使用することなく引き出しにしまったままだったのです。

キレイにディスプレイして鏡も置いて、1つ100円という、思い切った値段設定をしてお客さんを待つと、最初のお客さんは、なんと小学生の女の子でした。『わぁ!きれい!』と目を輝かせているので、『つけてみる?』と小さな首にかけてあげると、幸せそうなピンク色のお顔をして、鏡をのぞきこんでいるのです。その初々しさと清らかさが、言葉にできないほど美しくてなんだか胸がいっぱいになってしまいました。そうしているうちに、その女の子の妹さんも来て、姉妹でハート型と3連のデザインのものを買って行ってくれました。

それからしばらくして、小学4年生くらいの男の子が一人で来てくれました。恥ずかしがることもなく、真剣な眼差しで、一粒ダイヤ風のネックレスに、日焼けした手を伸ばすのです。寡黙なその男の子に、そっと聞いてみました。『プレゼント?』『うん。おかあさんに。』慣れない手つきで、お財布から100円を取り出して、ネックレスを買ってくれた男の子の背中を見送りながら、私はもう泣きそうでした。お家に帰って、男の子はどんなふうにお母さんに渡すのだろう。お母さんは、ニセモノの安いネックレス、でも母を思って買ってきてくれた息子に、どんな言葉をかけるのだろう。
本物のダイヤモンドか偽物のダイヤモンドか、もはやそんなことはどうでもよくて、清らかな子供の心に、本当の美しさを教えられた、思いがけない体験となりました。

文・中村幸代



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