TopicsEssay

その奥にあるもの

2017.07
文:中村幸代


ほぼ毎日のように電車に乗りますが、車内を見渡すとスマホを見ている人がほとんどですね。私も電車に乗ると、反射的にバッグへ手を入れてスマホを取り出してしまう。まだ自分は節度ある使い方をしているほう~なんて思っていますが、画面に夢中になってしまったら、それこそ周りの乗客のことなんて視界に入っていないかもしれません。簡単に自分の好きなモノが、いつでも自由に次から次へと見られることは、とても素敵なことですが、気になることもあります。

この間、ある教育プログラムの授業に子供と参加しました。若い先生が、一生懸命子供たちのために楽しませようと汗を流しながら、声を張って身体を動かして120%、200%、いや、それ以上の力でもって授業をしてくれました。この日の為にどれほど試行錯誤し、準備に時間と労力をかけたのだろうかと・・・それを思ったら、心からの拍手を送らずにはいられませんでした。

スマホ世代の子供たちの目にはどう映ったのでしょうか。自分を楽しませてくれる情報が簡単に手に入るからといって、目の前で汗して頑張っている人のことを、“面白い”か、“面白くない”か、という自分の好みの基準だけで浅く受け止めていないだろうか。「楽しませてくれて当たり前」と、どこか冷めた、批判的な目で見て、人の一生懸命さに輝きを見出せない人になってはいないだろうか。
力無い拍手が聞こえてきたとき、そんな不安がよぎりました。

表面的な情報は簡単に手に入る時代だからこそ、それが全てではないということを、むしろ、もっと大切なことがあるということを、子供たちにはつかんで欲しいと思っています。

文・中村幸代



MORE TO READ

4月のプレート

雪柳

ALSと生きる武藤将胤さんという人

幸せは足元から

アレルギーと向き合う

試練を楽しむ

8月のプレート

セアノサス・マリーサイモン