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人間の器



新聞広告欄に載っていた『人間の器』という書籍のタイトルが目に飛び込んできました。「器の大きい人は、なぜ最高の人生をおくれるのか。」「人間はいつからでも変われる。」「正しいと信じることを貫け!」など、目を引くフレーズが散りばめられている広告。私も常に思っています、器の大きな人になりたいと。この年齢になってからは特に。けれども大きな器を装ってもすぐにほころびが出ることを私は知っています。

先日、大好物のお菓子レーズンバターサンドがひとつ、冷蔵庫に残っているのを見つけました。ラッキー!と、口に運ぼうとしましたが、いや待てよ。息子も娘も好物ではないか。こっそり自分ひとりで食べてしまっては、それこそ器が小さいってものです。そばにいた息子に「これ食べる?最後の一個」と、ちょっと恩着せがましいなと思いつつ声をかけると「いいの?」と嬉しそうな息子。「いいよ、お母さんはダイエットしなきゃだから。どうぞ召し上がれ。(内心食べたい)」すると息子は、そのバターサンドを半分に割り始めたので「おお、優しい息子よ。」と心の中でニヤニヤしながら気付かぬフリをしてその場を離れました。直
後、息子は「食べる?」と、スマホの動画に夢中になっている妹にその半分を渡しているではありませんか!私は思わず「ねえ、3等分にしようとは思わなかったの?」と言ってしまったのでした。息子の困惑する顔。時すでに遅し。無理をして大きな器に見せようとして、かえってちっぽけな器をさらけ出してしまう結果となりました。

先程の書籍の広告には、こんなフレーズもありました。「自分を捨てたとき、人間の器は大きくなる。」まだまだ自分を捨てられない、修行の足りない私です。

文 中村幸代

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