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いくつになっても修行



コロナの影響で昨年から延期になっていたレコーディングをすることになり、久しぶりに録音スタジオへ行きました。集まってくれた演奏者もスタジオのスタッフも、20代か30代という若さで、とても優秀な仕事ぶり。私ひとりで現場の平均年齢を上げつつ、元来おっちょこちょいなものだから、ちょっと失敗もしてしまいました。「ああ、どうしてもっと的確な指示を、的確なタイミングでスマートに出せないんだろう・・・」
音楽録音は優秀な若者たちのおかげで素晴らしいものに仕上がりましたが、私自身はなんとなく心に影が残る1日となりました。

翌日は、高校時代の同級生と近所のテラスでランチ。彼女に「昨日の仕事の現場、若い人ばっかりだったよ」と言うと、通訳の仕事をしている彼女も「私も同じ!」と。いつの間にか年を重ねて周囲からベテランといわれる年代に足を踏み入れていたことに改めて驚きました。でもそう呼ばれるには、色々な意味でまだまだ足りない自分であることを今回痛感したわけで、そんな私に共感してくれた彼女は「もし仕事で落ち込んだときは、年下の子に慰めてもらうわけにいかないから、同い年の私たちで話しようね」と励ましてくれました。

まだ作曲の仕事を始めて間もない若い頃は、演奏者に怒られたり、笑われたりして「録音スタジオは修行の場だな」と思いましたが、今は今で、やっぱり修行の場。今度こそ的確な指示を出せるように、うんと準備をしよう!
あ。でも、おっちょこちょいは治らない・・・か。

文 中村幸代

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