お弁当のこと



『お弁当のこと』

取材協力…弁当コンサルタント 野上優佳子さん

今では海外でも「BENTO」と呼ばれて人気を集めるほど、日本のお弁当にはたくさんの魅力があります。
おかずの品目が多くて栄養バランスも良く、冷めても美味しく食べられるお弁当。毎日の活力になりますよね。
ただその反面、お弁当作りにヒーヒー言ってしまうお母さん方も多くいます。
今月号では、お弁当の魅力を見つめ直しながら、お弁当作りに役立つ情報をお届けします。

■お弁当の魅力とは

1.いつでもどこでも、自由に食事を摂ることができる。
自分の好きなタイミングで食べられるので、時間を有効活用できます。

2.残り物をお弁当箱に詰めかえると、きちんと次の「食事」として生まれ変わる。
お弁当のおかずに昨晩の残り物を詰める方は多いです。お皿にのせると残り物の集合体に見えてしまいますが、お弁当箱に詰めることで印象が変わり、再度美味しく食べることができます。

3.お弁当箱の蓋を開けることに、小さなエンターテイメントがある。
中に入っているおかずを知っていても知らなくても、お弁当の蓋をあけるときは気持ちがワクワクします。
「蓋をあける」という少しアナログな作業が、お弁当の演出のひとつになります。

4.家族をささやかに繋いでくれる。
お弁当のおかずは自宅で作ったものです。それぞれ違う場所にいても、おかずを通して家族は繋がることができます。また、持たせたお弁当が空になって戻ってくると、会社や学校で頑張ってきたことが分かるので、お弁当の減り具合で家族の状況を少し理解することができます。お弁当を通して、こうした無言のキャッチボールが可能になります。

5.お弁当箱は何回も使いまわせるので、エコに繋がる。
使い捨ての容器を使わないので、余分なプラスチックを使わずにすみます。
アクションが小さくても、ひとりひとりが気にかけていくことで、社会を変えられる可能性を秘めています。

お弁当の魅力はたくさんありますね!

■美味しそうなお弁当を作るポイント
お弁当を詰める時、他のおかずと混ざらないようにしたり、彩を考えたり、気を配ることが色々とありますよね。ポイントを押さえておくと、きれいなお弁当に仕上がりますよ。

・型崩れしない詰め方のコツ
➀おかずが大きいもの(ごはん)から埋める
②いちばん食べたいおかず(お肉類など)を多く入れる
※お魚のような長くて詰めづらいものはごはんの上にのせてOKです。
③形がしっかりしていて大きいもの(卵焼きやお肉類など)を入れる
④残りの隙間にお野菜を埋める

・彩豊かなお弁当を作るコツ
おかずは5色(白、黒、赤、黄色、緑)揃えることを意識すると、色鮮やかで美味しそうなお弁当が出来上がります。

白→ごはん
黒→ごましお、海苔、つくだ煮など
赤→ミニトマト、柴漬け、人参、パプリカなど
黄色→卵焼き、かぼちゃ、コーン
緑→ブロッコリー、小松菜、きゅうりなどの緑野菜

・食べる人が苦手なものは入れないようにする
お弁当には「食べる本人が好きなもの、美味しいと思うもの」など、全部食べられるものだけを詰めるようにすると良いです。苦手なものが入っていると、お昼が楽しみになりませんし、食べ残したものが傷んでしまい、お弁当箱に臭いがつく原因にもなります。栄養バランスを気にされる方もいますが、お弁当の時間以外にも1日のうちに食事をして苦手な食材を補うチャンスは何度もあるので、あまり心配しすぎず気楽に。

■お弁当作りの負担を減らすには?

・お弁当だからといって構えなくてOK!
お弁当作りは「献立」「調理」「盛り付け」「片付け」の4行程が全て含まれているため、これが毎日続くと思うと、どうしても面倒に感じてしまいます。とくに献立と盛り付けは負担を感じやすい行程です。ですが、休日のお昼ごはんの献立を考えてみてください。おそうめんや焼きそばなど、気軽に作れるものを献立にする方が多いのではないでしょうか。けれど、皆さん「お弁当」となると急に栄養バランスを考えて構えてしまいます。お昼は3食のうちの1食にすぎませんし、365日続いていくものなので、お昼ごはんだけを特別に切り出して考える必要はありません。おにぎりだけの日もあればサンドイッチだけの日があっても良いのです。「ごはん+おかず」がお弁当箱に詰めてあるものがお弁当の正解だと思わないようにすると、気持ちがラクになりますよ。

・スープジャー弁当で負担を減らす
最近注目を集めているのが「スープジャー」で作るお弁当です。お弁当を作る時、通常なら複数のフライパンやお鍋を使ったり、まな板も用意したりと、忙しい朝にたくさんの調理器具を使うことになるので、片付けも含めると大きな負担がかかります。けれど、スープジャーを使えば調理器具だけでなく、その他の負担も減らすことができるんです。

★スープジャーのメリット
➀具材を流し込むだけで出来上がるため、盛り付けをしなくてすむ
②保温力がとても高い→(70度以上を5時間持続)ので、移動中もとろ火調理をしている効果がある
②誰にも覗かれないため、人の目や食材の彩りを気にしなくてすむ
③汁漏れの心配がない
④体が温まる

スープジャーを家から持っていき、おにぎりは市販のものを買っても、手抜きには見えないのも嬉しいところです。女性なら300ml、男性なら500mlのものをおすすめしています。

・手間のかからない食材を使う
下ごしらえのいらない野菜や、あらかじめカットしてあるものや薄切りのお肉を使うなど、食材選びも工夫するようにしましょう。

お弁当作りは無理をせず、自分のできる範囲で構いません。
自然体に、自分が暮らしやすい日々を送るようにしていきましょう。

<取材協力>

野上優佳子さんプロフィール

ネットエディターやライターを経て、2011年、「食・健康・地域」をキーワードに子供達が笑顔で暮らせる未来をつくることを目指し、株式会社ホオバル設立。

料理家・弁当コンサルタントとして新聞、雑誌、TV、ラジオ、ウェブ、全国各地での講演など多メディアで活動中。弁当箱のプロダクト開発や商品アドバイザーなども行っている。30年以上お弁当を作り続け、300個以上のお弁当箱を使用した経験に基づき、実際に日々お弁当を作る母としての目線から実用性と汎用性の高いレシピと洞察が好評を博している。
2015年〜2016年にかけて、『マツコの知らない世界』(TBS)に「お弁当」のテーマで最短最多の出演。『すっぴん』(NHK第一)への半年間のゲスト出演。その他、テレビ、ラジオなどメディア出演多数。国立研究開発法人 水産研究・教育機構「SH“U”N project(サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト)」外部レビュー委員。東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー。

★『スープジャーで楽するおべんとう生活』(2019)
★『ごはんをつくる前に読む本 ‐三日坊主をくりかえせば自由に生きられる』(2019)
『野上優佳子のお弁当おかずの方程式』『お弁当のセカイ』(ワニブックス)
『野上さんちの超ラクチン弁当』(学研プラス)
『行事を楽しみ旬を味わう12ヶ月の食卓』
『がんばらない10分夜食レシピ』(笠倉出版社)
『夏弁』(主婦と生活社)
『家族まんぞく!パパッとできるお弁当』(三才ブックス)
『楽々かんたん1品弁当』
『楽々夏ごよみレシピ2015』
『楽々秋ごよみレシピ2015』
『楽々冬ごよみレシピ2015-16』
『楽々春ごよみレシピ2016』
『家飲みおつまみレシピ』
『悩まず作れる!おべんとうの手引き』(笠倉出版社)、
『冷凍で作りおき!子どもも喜ぶ朝5分の簡単おにぎりレシピ50』(宝島社)
など著書多数。

私生活では、社会人、大学生、小学生と、2女1男の母。
1972年生まれ。東京学芸大学教育学部国際文化教育課程日本研究卒業。







すぎなみ学倶楽部

お弁当作りのコンサルタント
料理家の野上優佳子さんは、お弁当作りの企画や提案のコンサルティングをしながら、テレビ出演や料理本の出版などで活躍している。「料理はもちろん大好きですが、とくにお弁当は、決まった枠にコンテンツ(おかず)をどう詰めておいしそうに見せるかを考えるのが楽しいですね」と話す。
かつては料理家と並行してライターもしていた。大学を卒業してすぐ、ジャンルにとらわれず執筆活動をスタート。出産後、子供が小さかった頃は、身近な暮らしに関する事柄を取材対象にすることが多かったそうだ。「すぎなみ学倶楽部」でも、古参メンバーの一人として、2006(平成18)年から約4年間、区民ライターの活動をしていた(※別注参照)。また、過去にはネットエディターとしてウェブサイトの企画構成やコンテンツ制作を手がけていたこともあり、いかにストレスなくユーザーを価値ある情報に導くかという視点で仕事にあたっていた。その時に身につけたコンテンツの取捨選択や、見せ方のコツなどが、「決まった枠(=お弁当箱)に詰める」という現在の取り組みにも生かされている。


子供の頃の誕生日プレゼントはオーブンだった
野上さんは青森県出身。両親が共働きで忙しかったため、子供の頃から料理をする機会が多かったそうだ。小学校5年生の誕生日プレゼントに、自らリクエストしてオーブンをもらったというのだから、関心も高かったのだろう。「料理は母や祖母が作る姿を傍らで見て覚えました。母は忙しい時でもゴマを煎(い)って、すり鉢ですって使っていました。青森の郷土料理を作る祖母は、県外出身の母が使わない食材を利用したり、同じ食材でも2人はまったく別の料理を作っていることなど、料理に関するいろいろなことに興味がありました」と過去を振り返る。また、読書好きな少女だった野上さんは、本から得た料理の知識も少なくない。「家庭科の教科書や、オーブンのレシピブックなどもよく読んでいたんですよ」。今でも海外へ行く機会があると、現地のレシピ本を購入し、その国ならではの調理方法を学んでいる。

お弁当は「モバイルの食卓」かつ「子供たちのお守り」
自身も母になり、子供たちが小さかった頃は一緒に料理作りを楽しんだという野上さん。今も自分や大切な家族のためにお弁当を作っている。「お弁当は、家族がそれぞれに会社や学校に持って出かけ、昼どきになれば、それぞれが違う場所で同じものを食べる。いわば“モバイルの食卓”かもしれません」。モバイル(移動性の情報端末)という例えを用いて、持ち運びできるお弁当を表現しているところがユニークに感じる。加えて、少し照れくさそうに「子供たちへの手作り弁当は、自分の目が届かないところで自分に代わって子供を守ってもらう“お守り”でもあるんですよ」と笑う。
ランチで外食すると、店が混雑していたり、量が多かったり、値段が割高だったりと、満足できないことがあるかもしれない。その点、自分好みに作れて、手軽に食べられるお弁当なら安心だ。だが、毎日飽きずに作るのはなかなか大変である。野上さんに質を下げず作り続けるコツを伺うと、「お弁当はいくつかのパーツが集まって完成形ですから、定番のおかずでも組み合わせを工夫するといいですよ。詰める時は、赤・黄・緑・白・黒(茶)の5色が入るとおいしそうに見えます」と教えてくれた。具体的なテクニックは、野上さんの料理本を参考にしてほしいが、どれも長い料理経験から導き出された方法だけに、説得力に富んでおり、マスターしたくなるに違いない。お弁当作りの世界が広がる可能性もある。

野上さんはお弁当箱も数多く所有する。そのうちの曲げわっぱの弁当箱の一部(提供:野上優佳子さん)

家族と過ごす時間を大事にする
野上さんは忙しい時も、仕事の息抜きに家族と過ごす時間を何よりも大事にしている。2人の娘さんとはドキュメンタリー映画を、まだ小学生の長男とはライダー映画と、幅広いジャンルの映画を楽しんでいるそうだ。子供たちとは、善福寺川緑地に出かけたり、長男の自転車の練習で児童交通公園にもよく遊びに行く。「杉並は、一時期離れたことがあっても、学生時代から一番長く住んでいる場所なので落ち着きます。住宅地は静かで子育てがしやすいですね」。また、荻窪駅前のタウンセブンに、肉屋、魚屋、八百屋がそろっているので、食材を求めてちょくちょく足を運ぶとのこと。「そこの八百屋の野菜は撮影に使ってもよく映えるので、撮影のための買い物はここを利用しているんですよ」

次世代を担う子供たちに幸せをつなげる
料理家・お弁当コンサルタントがメインの野上さんだが、今も自身の料理本は、執筆はもちろんのこと、企画編集まで携わることも多い。「難しいことをそぎ落とし、ストレスなく生きたいとよく思います。結局、情報を整理しそれぞれに最適化するのが好きなのでしょう」。また、コンサルティング会社「株式会社ホオバル」の代表というもう一つの顔も持っているが、その業務内容も簡単にいうと「ゴール設定があって、そこにさまざまな既存の技術を組み合わせて新しい価値を作ること」だと説明する。決められた枠の中に工夫してアイデアを詰め込んでいく、野上さんの歩んできた道のりにぶれはない。「これからも食の分野に限らず、次の世代を担う子供たちが、幸せに生活を送れる世の中にする手伝いをしていきたいと考えています」と語ってくれた。
取材を終えて
料理というジャンルの中で、野上さんはなぜお弁当コンサルタントなのか、そこに至るまでの過程に興味を持っていた。取材を続けるうちに、これまでの生活の中にお弁当作りやライター経験があり、やがてそこからさまざまな活動へと派生したという話が印象深く残っている。

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