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20代の自分へ



交差点で信号待ちをしていたら、若い男性に声をかけられました。「この辺りでマンションか戸建てを買われる予定はありませんか?」見ると、大手住宅販売会社のチラシを手にしています。

「あ、いやぁすみません。もうすでに住宅ローンを抱えていまして・・・」と答えると、
「そうでしたか。(数秒の間)・・・実は僕、家を買いたい人を探しているんじゃなくて、優しい人を探していまして。」
「は?」

聞けば”ノルマ”なんだと言う。通行人に声をかけて、お店の入り口まで連れて行きチラシを一枚渡せば、それでノルマ達成とのこと。息子のような年齢の青年にそう言われると、なんとか力になりたいと思ってしまう。結果、言われるままに少し先の店舗まで一緒に歩き、チラシを受け取って帰ってきました。

道中で、新卒だという彼に
「今は、いろいろ厳しいと思うけど頑張ってね。私も20代の頃が一番キツかったけど、なんとかなるものだから。」なんて”いかにも”な、オバサンお節介フレーズを口にしている自分がいて、苦笑いしてしまいました。でも、本当に心から応援したい気持ちで浮かんだ言葉でした。20代では見えなかったものが30代で少し見えるようになり、40代では更に。そうして少しずつ自分や周囲のことが見えるようになって、だんだんと悩みや困難を乗り越える力や感謝を知り、良い意味での力の抜き方を学んでいく。もし今の自分が20代の自分にアドバイスできるなら、やっぱり言ってあげたい。

「今はつらいだろうけど、なんとかなるから頑張って」と。
果たして、10年後20年後の自分は、今の自分になんとアドバイスするのだろう。たぶん、きっとこうだ。

「さぼってないで、ちゃんと運動しなさい!」
「ひー!汗」

文 中村幸代

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