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感動について



なんとなくではありますが、以前から「感動ってなんだろう」と思っていました。人によって感動するものが違うということは、これまでの出会いの中で何度か感じてきたことです。その違いは生い立ちに関係するものなのか、想像力の差によるものなのか、あるいは価値観の違いによるものなのか。だからと言って、ひとりひとり感動するものが完全にバラバラかというとそうでもなくて、私たちは近い温度感や一体感で感動を分かち合うこともできるわけです。そこには、きっと何か「つながり」があるのだろうなあと漠然と思っていました。

ファッション誌『JJ』の読者モデルをし、文筆家としても活躍した美しい哲学者、池田晶子さんの本『14歳からの哲学考えるための教科書』の中の言葉に触れて、私はその考えに少し自信が持てました。そこに書かれていたのは、ある人の仕事や姿が感動をもたらすとしたら、その人はその人を超えた何か大きなものに触れている。そして感動できる人も、その人を超えた何か大きなものを知っている...という内容で、私の思っていた「つながり」とは、そういうことだったのかと思ったのです。「その人を超えた何か大きなものに触れている...」その対極として「自分の欲得を計算して為されたような仕事」という表現をされています。「大きなもの」とは、少なくともとてもピュアなものなのでしょう。

人は感動することで、躊躇していた一歩を踏み出せることがあります。生き方さえ変わることがあります。感動とは不思議です。私も曲を作る人として、感動を届けられる人になりたいと更に強く思います。

文 中村幸代

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