栄養のはなし。

バランスの良い食事とは?

「バランスの良い食事を摂りましょう」という言葉をよく見聞きしますが、人によって抱くイメージは違いますよね。ひとつ言えることは、「〇〇を食べれば体調が良くなる」という事実はないということ。現時点で分かっている限り、栄養素として名前のあるものは30種類ほどあり、数ある物質や成分の中から選ばれたということは、研究などから「摂るべき栄養素」として認定された証です。どれも大事な栄養素ではありますが、30種類すべての栄養素が含まれる天然の食材は存在しないため、これらの栄養素を万遍なく摂ることが、結果的にバランスの良い食事といえるでしょう。
よく「一日に〇品目以上摂らなければいけない」という謳い文句がありますが、そこまで気にする必要はありません。食品によって含まれる栄養素が違うので、同じものを繰り返し食べないようにして、今あるものを食べ切ったら違う食材を買い、数日に渡って色々なものを摂るようにするのがベストです。

栄養情報はまず基本を大切に 

テレビや雑誌などで「〇〇の栄養素が良い」と言われた数年後には真逆のことが提唱されていることがよくあり、何が正しい情報なのか混乱してしまう方も多いと思います。栄養学の世界は数年~10年単位で新しい知見が次々と出てくる分野ですから、伝えられる情報もおのずと変化します。ですが、これらの情報を知識として身につける前に覚えておいて欲しいことがあります。こうした情報は木に例えると葉っぱや枝のようなもの。「30種類の品目を万遍なく摂る」という基本的なところが太い幹だとすると、様々な情報はこの太い幹に繋がってこそ生きるものです。この基本が実践できていなければ、ある特徴的な効果だけを追求した食品をやみくもに食べていても、あまり効果を期待できないでしょう。バランスの良い食事を摂った上で、それに付随した情報を取り入れるようにすることが大切です。

日本人に不足しがちな栄養素

日本人はとくに「鉄」、「カルシウム」、「ビタミンD」を意識的に摂るようにしましょう。とくに40歳以下の方は魚を食べる機会が減っているため、魚にしかほとんど含まれていないビタミンDを摂りづらくなっています。

炭水化物を抜くのはNG! 

ダイエットを目的に米やパンなどの炭水化物を完全に抜いて生活をする方がいますが、体や脳の「エネルギー不足」を招かないためにも、それは止めるようにしましょう。
大前提として、私たちの体はエネルギーを使って生きており、エネルギーは何も食べなければ生まれることはありません。口にした食材の中からひとつひとつの細胞が栄養素を取り込み、エネルギーに変える作業をしているのです。特に、炭水化物に含まれる「糖質」はエネルギーに変わるメインの栄養素。炭水化物を抜くと、糖質不足からエネルギーが作られず、体が疲れやすくなってしまいます。また、糖質が不足してエネルギー不足になると、体脂肪だけでなく筋肉も分解されてエネルギーとして使われるようになるため、代謝が悪くなって太りやすくなってしまいます。
ですが、炭水化物だけを食べていれば必要なエネルギーが作られるのかというと、そうではありません。炭水化物から必要な栄養素(糖質)を取り出し、エネルギーとして使う過程で必要となる「ビタミンB群」が不足すると、炭水化物を摂っていてもエネルギーが作られにくく、疲れやすくなります。また、使われなかった炭水化物の糖質は体脂肪に吸収され、太りやすくなる原因に。多過ぎず少な過ぎず、適度な量の炭水化物に加えてビタミンB群をしっかり摂り、体のエネルギーを作れるようにすることが大切です。

*ビタミンBが豊富な食材
豚肉、牛乳、卵、まぐろ、バナナ、ほうれん草、大豆など

健康で長生きにするために必要な栄養素

健康な状態でこの先も長く生きていくためには、「たんぱく質」をしっかり摂ることが大切です。たんぱく質はそれ自体をエネルギーとして使うこともできますが、皮膚や髪、内臓、筋肉を作るために必要な栄養素になります。動物性でも植物性でも構いませんので、積極的に摂るようにしましょう。最近ではプロテインドリンクを飲まれる方もいますが、あくまでもたんぱく質が不足気味の時の補助として利用するようにしましょう。たんぱく質の摂り過ぎからおならが臭くなったり、便秘になりやすくなることもあるため、基本は、主菜(肉・魚・豆腐など)で1食あたり80~100gくらいの量を摂るのが目安です。

カルシウムは20歳までにたくさん摂取を 

カルシウムは子供の間にしっかりと摂っておく必要があります。骨の成長や骨量が一番多くなる時期は20歳ですが、それ以降はそれまでに作られた骨量を維持するか、できるだけ減少させないようにする方法しかなく、増やすことができなくなります(骨粗鬆症の方の治療薬は例外です)。日光を浴びてビタミンDを吸収し、20歳までに健康で丈夫な骨を作っておくようにしましょう。乳製品が苦手な方は、日々の食事に小松菜や切り干し大根、ひじきなどを摂り入れてみてください。

食事は日々の楽しみのひとつですが、あちこちから聞こえてくる健康情報に踊らされて、食べたいものを我慢してしまう方が多くいます。もちろん、揚げ物を毎日食べたり、好きなものだけを食べ続けるような偏った食生活を送ることは体によくありません。けれど、万遍なく栄養素を取り入れていれば、無駄な我慢をする必要はないことをぜひ覚えておいてくださいね。

<取材協力>

松崎絵里さん
一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、栄養学博士(専門は、栄養疫学)、料理研究家。日本栄養・食糧学会会員。女子栄養大学生涯学習講師。
慶應義塾大学卒業。栄養士養成校にて「統計学」の非常勤講師。
LE CORDON BLEU(代官山校)料理課程を首席で卒業。菓子課程を修了しグランディプロム取得。Paris Ecole Ritz Escoffier 短期クラス修了。
多くの人が栄養学の知識を学ぶことができるよう、日本栄養検定協会を設立し普及に努めている。
■一般社団法人 日本栄養検定協会

2023

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