TopicsEssay

まんなか辺の道

2015.08
文:中村幸代



 長男を病院で出産して、退院の日。8ヶ月で生まれてきた壊れそうな小さな命を、慣れない手で抱きかかえながら初めて空の下に一歩を踏み出した時、両手の中の小さな顔に太陽の光があたって、クシャッと眩しそうにした愛おしい顔を今でもはっきり覚えています。
「あれがお日様だよ。」「お空だよ。」「これは葉っぱだよ。」「お花だよ。」「眩しいね。」「きれいだね。」そんなことを話しかけながら、よくぞここに生まれてきてくれたと・・・。そして私が知っている素晴らしい景色や歌や言葉、そして愛をいっぱい教えてあげたいと心から思いました。

 あれから約10年。
 息子なりにさまざまな出来事や人に遭遇し、悔し涙を流したことも、迷ったり傷ついたりしたこともたくさんあって、どうもこの世の中は美しいものばかりではないようだ、と彼なりに分かってきたようです。
 「うそはいけないよ。」「約束は守らないとね。」
 母たるもの、清く正しく教育すべしと思ってきました。でも、大人だって小さなウソをつかなければならない時もあるし、どうしても約束が守れない時もある。「大人の都合」ですね。スクールカウンセラーの先生がおっしゃるには、思春期の子供は、これまで親の言うことは“絶対だ”と信じてきたのに、「どうやらそうでもないらしい」と気づき始めて、親の言動をナナメから観察し、スキあらばそこを攻撃して確かめようとする。これが「反抗期」だと。そうなったら私はもう、正直に「大人の都合」を真摯に説明しようと思っていますが、最近こんなことにヒントがあるのではないかと思っています。それは「中道」ということです。お釈迦さまが説いた教えの中にあるそうですが、中道とは、どちらか極端に偏らない真ん中を行くということ。これはどっちつかずのいい加減な選択をしなさいということではなく、両者の存在を否定せずに認めた上で、どちらにも偏らない“まんなか辺の道”を模索しましょうという、大きな懐でとらえる深い智慧のように感じています。
 いつも自分を正しい在り方に律することに偏ると、それが出来ない人を許せなくなったり攻撃することになり、結局自ら苦しんでしまうなんてことに。

 まんなか辺の道・・・簡単に見出せる道ではなさそうですが、まだまだ純粋な心の目を持っている息子と日々会話しながら、その道を模索して歩いていきたいと思っています。

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