機嫌良く

先日、友人と用事を済ませた帰りに鰻が食べたいという話になり、駅に隣接したビル内の鰻屋さんに立ち寄りました。入り口横の食品サンプルの中に、“鰻丼2400円”と書かれたものがあり、私たちは「この値段ならイケる!」と顔を見合わせて、すぐにのれんをくぐりました。席に案内され、出されたお茶をすすりながら、あらためて手元のメニューで2400円の鰻丼を探すものの見つからず。
一番お手頃なものでも4800円となっています。あれ?
恐る恐る店員さんを呼び止めて問うと「あ、それはお持ち帰り用で少し小さめなんです。」と。さて、どうする?
友人は日頃から無駄遣いをせず、つつましく高齢のお母様とふたりで暮らしています。5000円近い鰻を食べるなら、私とではなくお母さんと食べたいのではないか。彼女の顔をメニューごしにチラッと見ると、明らかに気が進まない表情に見えました。
「出よう!」お茶に手をつけてしまったけれど、勇気を出して立ち上がり、お店の方には「ごめんなさい、また改めて出直します」と言い、彼女を無理やりひっぱる形で店を出ました。「鰻、食べたかったんじゃないの?」と聞く彼女に「食べたかったけど、2400円じゃないなら今日はやめとこう」
その言動に後悔はないけれど、残念に感じたこともありました。それは鰻屋さんの店員さんが、あからさまに不愉快な態度をなさったことです。確かに迷惑をかけてしまったけれど、ここでもし、「またお待ちしています」と機嫌よくおっしゃってくださっていたなら、私は別の日に必ず来ようと思ったに違いないのです。
たまたま店員さんの気分が悪い日だったのかもしれません。お互いさま、嬉しいことも嫌なこともありつつの日常です。自分の態度ひとつで誰かの気持ちを前向きにすることもできれば、そうでなくすることもできる。ならば、できるかぎり機嫌よくいたいものだなあと考えさせられる出来事でした。
文 中村幸代






