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ハズレても



商店街を歩いていたら、ハッピを着たお兄さんが、「お子さんと楽しめる旅行が当たるくじ引き、いかがですか〜?空くじなしですよ〜!」叫んでいました。すると、私の後ろの方からお子さんの声が聞こえてきました。「空くじってなに?」

するとお母さんらしき人が、こう答えました。「ハズレがないくじ引きってことよ。」それを受けてお子さんは、「ハズレがないくじ引き?…(しばし間)…くじ引きは、ハズレがあるから楽しいんじゃないの?」もっともだ!!(私の心の声)
その子は続けて、「くじ引きはさ、ハズレて、ああーくやしいっ! って思うから楽しいんだよ。」と言ったので、私は一瞬、若干の違和感を感じたものの、でもすぐに不思議な爽やかさを感じました。

くじ引きは誰でも当てたいと思って挑むもので、当たれば楽しいし、嬉しい。でも“ハズレたことを楽しい“という、子どもの無欲さや純粋さを感じたからです。
「空くじなし」と聞いて私が思うのは、明らかに“ハズレ”て、ティッシュや使用目的がわからないシールとかをもらって、バッグに突っ込みながら、「まあ、いっか……」と自分をなだめる、あのパターン。子どもの純粋な心。いつ、どこに置いてきてしまったのだろう……。
いや、これからだ。どんなことも面白がって楽しんで生きていくことができたら、どれほど素敵だろう。ハズレを引いて、楽しめる大人。諦めずに、目指していきたいと思います!

文 中村幸代

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