麹が育む、日本のうまみと元気

「My Favorite Things」は、いま、話題にしたい人・もの・コトを音楽プロデューサーの中脇雅裕がご紹介させていただきます。
今回は「麹が育む、日本のうまみと元気」のお話です。
日本の食文化を支えてきた「麹」とは
秋も深まり、肌寒さを感じる季節になってきました。こんな時期におすすめしたいのが、昔から日本の食卓を支えてきた「麹(こうじ)」です。今回は、日本では古くから国の菌「国菌(こっきん)」と呼ばれるほど身近な存在でもあった「麹」のお話をさせていただきます。
麹とは、お米や麦、大豆といった穀物に「麹菌」というカビを繁殖させて作られたものです。
この麹菌が作り出す酵素のおかげで、デンプンは糖に、タンパク質はアミノ酸に分解され、甘みや旨みが生まれるのです。
味噌や醤油、日本酒、みりん、甘酒などは、日本の伝統の味ともいえるものですが、どれも麹がなければ成り立たないことをご存知でしたか?
古くは平安時代から、「麹座(こうじざ)」と呼ばれる職人集団がいて、宮廷や寺社に麹やお酒を納めていたそうです。江戸時代になると、味噌や醤油が広く庶民の食卓に普及し、麹は日常に欠かせない存在となっていきます。
麹の働きが学問的に研究されるようになったのは、明治から昭和にかけての頃。麹菌がつくる酵素のおかげで食材が甘くなったり、旨みが増したりすることが、科学的な言葉で説明されるようになりました。
そして大きな転機が訪れたのは、1970年代のこと。麹から発見された「コウジ酸」に、美白効果があることが証明され、化粧品業界から一気に注目を集めたのです。
種類と働き、そして体にうれしい効果
麹にはいくつか種類があります。
まずは「米麹」。白米や玄米に麹菌を繁殖させたもので、甘酒や塩麹、味噌やみりんなど、日常の食卓には欠かせません。優しい甘みと香りが特徴的で、みなさんにとっても一番なじみの深い麹なのではないでしょうか。
次に、九州でよく使われる 「麦麹」。大麦に麹菌をつけたもので、麦味噌や麦焼酎の原料に使われ、香ばしく軽やかな甘みと風味が特徴です。
そして 「豆麹」。大豆に直接麹菌をつけたもので、中国の豆板醤や、沖縄の豆味噌に使われます。独特のコクが出ます。
さらに、麹菌そのものにも違いがあります。
日本酒や味噌に使われる「黄麹」は日本酒や、味噌などに広く使われ、甘みや旨みを引き出してくれます。
泡盛に使われる「黒麹」は強いクエン酸で雑菌に強く、深いコクがあります。
焼酎造りに使われる「白麹」はクエン酸を多く作り、爽やかな酸味が特徴です。
それぞれに異なる風味と働きがあり、それが地域ごとに特色のある、豊かな味わいを支えてきました。
また、麹には様々な嬉しい健康効果もあるのです。
「消化を助ける」「腸内環境を整える」「美白・美肌効果」「疲労回復」「免疫アップ」「生活習慣病予防」などさまざまな効果が期待できますから、取り入れない手はないでしょう。
麹菌が出す酵素は、デンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に分解してくれるため、消化を助け、栄養の吸収を良くしてくれます。分解された糖やアミノ酸は体に吸収されやすく、エネルギー補給にも最適。ビタミンB群も豊富ですから、代謝を助け、疲労回復をサポートしてくれます。「疲れたときに甘酒を飲むと元気になる」と言われるのも納得ですね。
さらに、麹から生まれる「コウジ酸」という成分は、シミの原因になるメラニンの生成を抑える働きがあり、肌の透明感やハリを守る効果が期待できるそうです。美白化粧品にも応用されていますから、ご存知のかたも多いのではないでしょうか。
また、発酵食品が「腸活」に良いと言われるのはご存知の通り。特に麹に含まれるオリゴ糖や発酵過程で生まれる成分が腸内細菌のエサになり、便通改善や免疫力アップにつながります。
麹には抗酸化作用のある成分も含まれており、血流改善や、動脈硬化・高血圧の予防にも役立つというのですから、頼もしい限りですね。
寒さが本格化していく11月。体調を崩しやすい季節の変わり目こそ、日本の知恵「麹の力」を、食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。
"My Favorite Things" 中脇雅裕 Masahiro Nakawaki

大学在学中より、多くのTV・ラジオのCM音楽を制作。
大学卒業後、財団法人ヤマハ音楽振興会にてポピュラー音楽指導ディレクターとして音楽教育法の研究および講師の研修を担当。
その後、東京に居を移しレコーディングディレクターとして数々のアーティストの音楽制作を手がける。
今までに制作に携わったアーティストはCAPSULE,Perfume,きゃりーぱみゅぱみゅ,三戸なつめ,近藤夏子,Jungle Smile,手嶌葵,古澤巌,中村幸代などジャンルを問わず多岐に渡る。
その他に、映画、CM、各種イベントなどの音楽制作はもとより、イベントプランニング、執筆活動、講演、ラジオDJなどその活動は幅広い。
音楽教育の経験とメンタルコーチングの知識を生かした講演、研修、個人コーチングも行っており現在、サウンド&レコーディング・マガジンに「音楽クリエイターのためのイメージ・トレーニング!」を連載中。
◆オフィシャルウェブサイト http://nakawaki.com/


