腸と脳の関係
「My Favorite Things」は、いま、話題にしたい人・もの・コトを音楽プロデューサーの中脇雅裕がご紹介させていただきます。
今回は「脳と腸−そして新たな相関関係」のお話です。
心と体に影響力大⁉️ 腸の「3つの役割」
人はストレスを感じると交感神経が高まり、腸の動きが悪くなります。不安や緊張から、おなかが痛くなったり、旅行などで環境が変わると便秘になってしまったりするという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
脳の状態が腸の機能に影響を与えるということは以前からいわれていましたが、反対に腸の状態変化が脳に伝わり、気分や感情という心の状態に影響を与えるという逆の流れがあることも、近年わかってきました。
この脳と腸がお互いに影響を及ぼしあう関係を「脳腸相関」と言います。 慢性的なストレスは過敏性腸症候群やうつ病の発症などにつながることはよく知られていますが、これらのストレスと関連の深い病態の解明や研究が進む中で、脳と腸との相関関係が注目されるようになったのです。
腸は食べ物を消化し栄養素を吸収する消化器官ですが、近年ではこの役割に加えて「免疫系」、「内分泌系」、「神経系」の3つの働きを司る重要な器官であることも明らかになってきました。
腸には、食べ物だけでなく細菌やウイルスなどのさまざまな病原体と常に接する器官であるがゆえに、さまざまなリスクに対応できる免疫系といわれるシステムが備わっています。腸には体全体の半数以上の免疫細胞が存在し、腸管免疫系という独自の免疫系が発達していることから、腸は“人体最大の免疫器官”ともいわれているのです。
次に腸の「内分泌」についてですが、私たちの体内では、ホルモンという物質が分泌され、さまざまな体の働きを調節しています。このホルモンのおかげで、体の外や内で何か変化が起こっても、体の機能が常に安定するように保たれます。 腸には、ホルモンを分泌する「腸管内分泌細胞」という細胞があり、これが内分泌器官としての役割を果たしています。 例えば、「おなかが空いた」と感じる空腹感は、腸から分泌される食欲を促すホルモンが、「空腹だから何か食べて」という信号を脳に伝えることで起こるのです。
次に腸の「神経」との関係です。腸には、脳と同じように、情報を処理して伝達する役割を持つ神経細胞が存在するといわれています。その数は脳や脊髄に次いで多く、さまざまな種類の神経細胞があります。 これらの神経細胞は、腸全体に網の目のように広がっており、腸管神経系と呼ばれる独自の神経ネットワークを作っています。腸はこのネットワークを使い、感知したさまざまな情報を処理して脳へ伝達していることがわかってきました。
そしてこの、腸から脳への情報伝達のルートとして注目されているのが、「迷走神経」です。腸から脳への情報量は脳から腸へ伝わるよりも多いと考えられており、脳は腸から送られてくる情報に大きく影響を受けているといって良いでしょう。
健全な腸内環境のためには“多様性”が大事
さらに最近ではこの脳腸相関に、腸にすみつく腸内細菌が関係していることもわかってきており、脳腸相関という考え方は「脳−腸−微生物相関」という新しい考えに進化してきています。 つまり脳腸相関をより深く理解するためには、今や腸内細菌は無視できない存在になってきたのです。
この腸内細菌には、3種類のグループがあります。有名なのは善玉菌で、乳酸菌やビフィズス菌などです。善玉菌は消化や吸収を手伝うだけでなく、免疫機能を調整する機能もあり、健康維持には欠かせない役目を持ちます。
それに対する悪玉菌には、ブドウ球菌や大腸菌があり、ガスを発生させたり発ガン物質を産生したりと、病気の原因となることも多い菌です。また、そのどちらでもない菌である3番目の菌、日和見菌(ひよりみきん)という菌も存在します。この日和見菌は健康なときはおとなしくしているものの、体調の悪化によって悪玉菌が増えると、自身もまるで悪玉菌の様な動きをします。
これはつまり、“腸内で優勢な菌と同じ動きをする菌”といえるでしょう。
では、ベストな腸内環境とは何か。それは、善玉菌だけでなく、悪玉菌も日和見菌も含めた腸内細菌の多様性が保たれている環境だといえます。特定の菌種が過剰に増えると、腸内のバランスが崩れて消化不良や免疫力の低下、さらにはメンタルヘルスの悪化にも繋がります。
ではこの、多様性が保たれた腸内環境に整えるためにはどうすればいいのか。
まずは、腸内細菌のエサになる野菜、果物、全粒穀物などの食物繊維を摂ること。また善玉菌を補うヨーグルト、味噌、キムチなどの発酵食品を摂ること。そして、ストレスは腸内環境に悪影響を与えるので、ストレス解消のために適度な運動やリラクゼーションを行うこと。この3つを心がけて腸内細菌の多様性を維持し、それぞれの菌のバランスを整えることが、健全な腸内環境を保ち、ひいてはメンタルを含めたトータルの健康維持を叶えることへとつながるのです。
"My Favorite Things" 中脇雅裕 Masahiro Nakawaki
大学在学中より、多くのTV・ラジオのCM音楽を制作。
大学卒業後、財団法人ヤマハ音楽振興会にてポピュラー音楽指導ディレクターとして音楽教育法の研究および講師の研修を担当。
その後、東京に居を移しレコーディングディレクターとして数々のアーティストの音楽制作を手がける。
今までに制作に携わったアーティストはCAPSULE,Perfume,きゃりーぱみゅぱみゅ,三戸なつめ,近藤夏子,Jungle Smile,手嶌葵,古澤巌,中村幸代などジャンルを問わず多岐に渡る。
その他に、映画、CM、各種イベントなどの音楽制作はもとより、イベントプランニング、執筆活動、講演、ラジオDJなどその活動は幅広い。
音楽教育の経験とメンタルコーチングの知識を生かした講演、研修、個人コーチングも行っており現在、サウンド&レコーディング・マガジンに「音楽クリエイターのためのイメージ・トレーニング!」を連載中。
◆オフィシャルウェブサイト http://nakawaki.com/