![]()
アニメ「母をたずねて三千里」(日本アニメーション製作、フジテレビ系列76年放送)は、イタリアの港町ジェノバに住む少年マルコが、アルゼンチンに出稼ぎに行ったきり音信不通になったお母さんを自らが旅し、探し出す物語である。原作は、イタリア人作家のエドモンド・デ・アミーチスが書いた短編のひとつで、「アペニン山脈からアンデス山脈まで」というのが原題。アペニン山脈はイタリア北部、アンデス山脈は南米大陸の南北に横たわる山脈のこと。ヨーロッパから南米までの長くきびしい旅路は、トラブルの連続で途中何度もくじけそうりなるが、千辛万苦の末、マルコ少年とお供の子猿アメディオは、アルゼンチン北部のトゥクマンの町でお母さんと再会する。
以前アルゼンチンのブエノスアイレスに住んでいた頃に、このトゥクマンの州政府観光局長から、観光振興にかかる相談を受けたことがある。サトウキビの生産以外にこれといった産業がないこの地で観光資源を発掘したいというのがその主眼だった。日本の地方都市でも近年さかんになっている観光産業による一種の町おこしである。相談を受けたときに観光局長に真っ先にこう聞いた。
「街のどこかにマルコ少年とお母さんが抱き合って再会を喜んでいる銅像はあるんですか?」
ところが、返ってきた答えが意外なものだった。
「マルコって、それ誰ですか?」
「母をたずねて三千里」の話は、原作も含めて読んだことも、その存在すら知らないということであった。物語のクライマックスの舞台、トゥクマンの観光局長が知らないぐらいだから、アルゼンチンの世間一般にはまったく知られていないことが、後の調査でわかった。「フランダースの犬」も物語の舞台であるオランダではほとんど知られていない。アントワープ郊外の町ホーボーケンにあるネロと犬のパトラッシュの銅像にカメラを向けるは日本人だけらしいが、「母をたずねて三千里」はあまり知られていないというレベルではなく、当時アルゼンチンでの知名度は限りなくゼロだったのでかなり驚いた。
![]()
イグアスの滝
それでは南米には観光ネタが少ないかといえば、そんなことは全くない。反対にネタの宝庫といってもいいぐらいである。たとえば、メルコスール観光局(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ4カ国でなる地域統合機構の観光局)のサイト(http://www.mercosur.jp/)で紹介されているように、日本では広く知られていないだけで魅力的な観光資源は盛りだくさんだ。2007年にNHKで放送された「探検ロマン世界遺産:プロが選ぶ!世界遺産ベスト30」では、フランスのモン・サン・ミッシェルをおさえて1位がペルーにあるインカ遺跡のマチュ・ピチュ、2位がブラジルとアルゼンチンの国境にあるイグアスの滝であった。それ以外にも世界中から観光客が押し寄せる自然遺産アルゼンチンのペリト・モレノ氷河、神秘の島チリのイースター島、そして最後の秘境-アルゼンチンからの南極ツアー等々と・・・きりがない。こうした観光地のほとんどは、ちょうど今の季節、南半球の夏に訪問ベストシーズンに突入する。
青山計一(あおやまけいいち)
1964年生まれ。20年以上世界各国で生活し、現在ブラジルに暮らす。
「喫茶みどり―ブラジル支店―」では、文化・生物・社会など、様々な「多様性」をテーマに、海外の生活情報をお届けします。
Back Numbers































